お知らせ|2021年07月27日
中年元ニートから8050問題を考える
早期離職を繰り返す、仕事が続かない、なかなか自分が希望している企業に就職ができないという人達からの相談はうけていても、
実際に一緒に仕事をしたことは、今まではありませんでした。
そんなキャリアコンサルタントが10年以上、働いていなった中年元ニートさんのOJTを担当することに。
キャリアコンサルタント独自の視点でのOJT奮闘ぶりです。
1.中年元ニートAさんが入社
仕事が続かない、職場の人間関係を上手く築けないなどの問題を抱えている方からの仕事に関する相談を受けることはあっても、ほどんと仕事をしたことがない方と一緒に仕事をすることはありませんでした。
しかし、今回、そんな20年間ほぼ働いていない中年ニートだったAさん(仮)が、職場に入ってきました。
面接の段階で、業務・作業をこなせるとは思っていませんでした。
ましてや「仕事」はとても出来るとも思わなかったですが、
何故か、採用されてしまいました。
本来は即戦力が欲しかったのですが、なかなか募集してもマッチングする人がいなかったため、どうしてもすぐに人がほしいという理由で、採用したということでした。
厚労省の委託事業で就労支援をしている場なので、そういった方を採用していくことも就労支援の大切な役目の一つです。
しかしながら、彼の意識とスキルは職場のメンバーのイメージを超えてしまっていました。
この程度の事ならばというパソコンスキルも、20年間も仕事でパソコンを使用していないためなのか、かなりのズレがあります。
本人から聞いていたWord、Excelのスキルと実際に作業としてしてほしいレベルが全くといっていいほど違っているため、私達自身が戸惑いの連続。
ここで、一般企業であれば丁寧に教えていく時間がなかったかもしれませんが、そこは就労支援の現場!
ぐ~~~~っとこらえて、一つ一つ丁寧に教えていきながら、作業を覚えてもらっています。
キャリアコンサルタント歴16年の中で、仕事が続かない方や人間関係を築くことが難しい方の相談は行っていたものの、実際に一緒に仕事をする経験はありませんでした。
今回のブログ内で「作業」と「仕事」という言葉を敢えて区別しながら使用しています。
私の考えでは、「作業」とは、目の前にある業務をこなしている状態です。そこには何も意志が入っていない、手や身体を動かしている状態。
「仕事」とは、その業務の意味を考えながら、工夫したり、誰かの役に立つことを考えるなどの意識をもって手や身体を動かしている状態という区別をしています。
今回の中年元ニートAさんには、まずは作業から入っていただこうかなぁと思っています。
その作業の中で、何かが出来るようになることで少しづつ「仕事」の楽しさを感じてもらえればという想いからです。
しなしながら、彼にとっては作業はやはりつまらないものみたいです。
もっと、やりがいのあることをしてみたいと思っているようですが・・・
2.中年元ニートAさんから見えてきた課題
中年元ニートのAさんと一緒に仕事をしていると、様々な課題が見えてきます。
その中でも一番の課題は、自己評価です。
Aさんにとって、今まで仕事をしていなかった理由は、たまたま採用されなかったという事らしいです。
しかし、20年間も採用されないということがあるでしょうか?
採用されなかった理由は、
①自分のスキルとマッチする仕事・会社を選んでいなかった。
②会社名などの知名度を優先していた。
③頑張りぬくことが出来かった。
④すべて自己評価で他者からの視点を受け入れていなかった
⑤客観的な視点や他者視点で物事を考えない
このような課題がありました。
この中で一番の問題は、客観的な視点が持てないということです。
・他人がどう思うのか?
・他人からどう見えているのか?
・他人に対して、どう対応していけば良いのか?
・何を要求されているのか?
こういう視点で物事を見る習慣がありません。
彼の場合は、いつも自分視点です。
他人がどう思うかということではなく、自分がどう思っているのか?どうして貰いたいのか?
これらが優先しています。
そのため、自分自身を顧みることがないので自分としては出来ているという想いや出来ないことがあれば教えてもらっていないなどの他責です。
他責を攻めるのは簡単ですが、多分、他責という意識もなさそうです。
他責という意識がないのということが厄介です。
意識していないことを意識できるようにするには、かなりの時間と労力を要します。
8050問題は、一筋縄ではいかないという理由がここにあります。
働いかないのか、働けないのかどちらの状態かで対応方法が違ってきますが、
根底には、Aさんのように働き続けらえる能力の問題があります。
Aさんの場合も国立大学卒という高学歴です。
高学歴でも仕事ができるかどうかは別というのが、現代の仕事事情です。
職場の人間関係を上手に築いていくためには、仕事でのミスを少なくすること。
そのためには、わからないことをわからないと聞ける能力が必要です。
それが、なかなか出来ない人が多いのが早期離職者には多い傾向があります。
3.8050問題を解決するためには?
仕事場の先輩という立場で、現在、中年元ニートAさんの教育を担当しています。
しかし、先輩でOJT担当という立場だけでは、Aさんの教育は出来ないと思っています。
なぜなら、私にも感情があるからです。
そのため現在は、キャリアコンサルタントという視点で彼の教育担当しています。
生産性や効率を求められる状況下ではなかなか難しいからです。
仕事場のメンバーも同じ気持ちで対応してくれています。メンバーも彼の今までの状況を理解したうえでの対応を心がけています。
このように、当事者に変化を求めることは難しいことです。
状況を理解している人達から、受け入れ体制を整えない限り国が実行しているような就職氷河期世代への就労支援だけでは難しいと思っています。
本人の意識変革を促す研修を実施するよりも、受け入れ側の意識変革を求めた法が簡単です。
本人にはメンタル面だけでなく丁寧な能力チェックを専門的に行い、受け入れ側がそれらの情報をしっかり理解した上で受け入れ態勢を整えることで初めて少しずつでも8050問題を解決していく光が見えてくるのではないでしょうか?